腰椎分離症とは?原因と対処法についてお答えします!(2)
前回の続きです。
成長期の子供に起きる、腰椎分離症!
「分離症」から「すべり症」に移行する決定的な理由とは?
腰の痛みに一生悩まされないために知っておくべき大切なお話です!
前回は腰椎分離症になるメカニズムについてお伝えしましたね。
そこで、今回は分離症からすべり症にならないための基礎知識をお伝えします!
詳細解説!バレー部所属高校1年生A君が「腰椎分離症」の後に発症した「すべり症」とは?
ここでまたA君に登場してもらいましょう!
全国強豪校のバレー部に所属する、高校1年生のA君は腰痛が原因で、思うようなプレーが出来ず、病院を受診します。
しかし、レントゲンでは異常なしとの診断から、運動を中止せず、痛いながらも部活に参加していました。
やはり、おかしいと思ったA君は再度他の病院へ行き、腰椎分離症と診断されるのです。
しかし、初めは辛かった腰痛も、時間とともにその痛みは軽減して行き、多少の腰痛を感じながらも、部活は続けられていたのです。
そして2年が過ぎ・・・
高校3年生になったA君は、相変わらずのまじめさで、高校最後の大会に向けて練習をしています。
そんなある日、突然左のお尻から足にかけて鈍い痛みを感じるようになったのです。
そして、その痛みは日に日に増し、今度は足に力が入りにくくなり、痺れも出現してきました。
不安を隠せないA君・・・・
さて、A君にはいったい何が起こったというのでしょう?
「腰椎すべり症」とは、椎体の一部が前方にズレてしまうこと!
只ならぬ痛みのため、不安になったA君は再び病院を訪れます。
そこで、下された診断は
「腰椎すべり症」!
なんと2年前に患った腰椎分離症がすべり症へと移行してしまったのです!
・・・「すべり症?」
それでは、下図をご覧下さい。上図は腰椎分離症がすべり症へと移行したモデル図です。
上の左図は正常な腰椎を横から見た図です。
そして、右図は腰椎の関節突起間部で骨折した後に、椎体が赤矢印の方向にズレてしまった様子を表しています。
ここで注目して欲しいのが、上の椎体が前方へ滑ってしまうことにより、腰椎の間から出る神経を圧迫しているという点です。(ここでは赤丸の所で、椎間板が黄色い神経を圧迫していますよね。)
この様に、縦に積み上げられた椎体の一部がズレてしまうことを「すべり症」といいます。
(通常すべり症になっても神経への圧迫は起きないと言われていますが、骨のズレ方によっては必ずしも神経障害を起こさないとも限りません。)
だから、関節突起間部の疲労骨折である分離症を放置すると、すべり症に移行してしまうのですね。
すべり症に移行しないために知っておくべき2つのポイント
分離症になったからといって、全てが「すべり症」に移行するわけではありません。
「すべり症」に移行しないためのポイントは2つあります。
1. 2ヶ所の関節突起間部を両方とも骨折させない
一つの腰椎には2ヶ所に関節突起間部があります。
ですから、1ヶ所が折れても、もう一方が折れなければ、椎体が滑ることはありません。
つまり、分離症になったからといって、すぐにすべり症に移行するということでないのです。
しかしながら、1ヶ所折れた状態のまま運動を続けていると、反対側に負担が集中して、こちらも疲労骨折する事が多いのです。2ヶ所すべて折れると支持機構がなくなるので、すべり症になる確率がぐんと上がります。
ですから、一方が折れた段階で患部を安静にする事が大切なんですね。
2. 成長期にしか見られない成長軟骨板を損傷させない
分離症がすべり症へと移行するのには、ある原則があります。
それは、成長期に存在する成長軟骨板の存在が大きく関わってきます。
このように、椎体と椎間板の間には成長軟骨板という組織が存在します。
この成長軟骨板の役割は、骨を成長させることです。
(骨が成長するのには軟骨組織から骨組織へと成熟することが必要となるためです)
しかし、この成長軟骨板は外力(特に剪断力)に対して非常に弱いため、骨折により支持組織が破綻するとこの成長軟骨板が壊れ、椎体が前方に滑ってしまいます。
これがすべり症に移行する理由なのです。
ただし、この成長軟骨板は文字通り成長期にしか存在しないため、成長期を過ぎてしまえば、軟骨組織は全て成熟して骨組織へと変換されます。
すると、腰椎に分離症があったとしても、椎体が滑ることはないのです。
この成長軟骨板がまだ存在しているかどうかは、レントゲンでも判断できるのですが、非常にマニアックな話しになってしまいますのでここは割愛しますね。
腰椎分離症の治療の選択肢:骨癒合を目指すのか、それとも目指さないのか
ここまで、分離症のリスクについて解説してきました。
それでは、分離症になった際にどのような処置がされるのかについてお伝えします。
まずはじめに、分離症(骨折)の治療に対して、骨癒合を目指すのか、それとも骨癒合は目指さないのか。
大きく、2つの考え方があります。
なぜかというと、分離症によりその後、必ず腰痛に悩まされるのかというと、そうではないこともあるからなのです。
しかし、腰痛に悩まされる可能性や、すべり症に移行しないかというと、そうでもありません。
これは、神のみぞ知る事なのです。
ただ、将来腰痛に悩まされる可能性をゼロに近づけるためには、それなりの処置が必要となります。
なぜ、このような言い方をするのかというと、この処置にはかなりのストレスを要するからです。
骨癒合を目指すための最適な処置
骨癒合を目指すためには、おおよそ3ヵ月の完全な運動中止と、ギプスなどによる体幹の硬性固定が必須となります。
もちろん固定をはずして入浴はできますが、それ以外は原則、体幹のギプスを装着させます。
腰椎分離症は思春期(中・高校生)の、特にスポーツを熱心に行っている子供に多いため、3ヵ月間運動をせずにギプス固定というのは、本人にとって多大なストレスを与えることになります。
そして、途中で断念すれば意味をなさないため、その処置を行うかどうかについては、いつも本人や親御さんに十分説明して、慎重に決めます。
ただし、骨癒合を目指すと決めたのであれば、できるだけストレスの少ないように配慮していく事が我々の仕事であると痛感しております。(誰だって多感なこの時期にギプスなんて絶対嫌ですものね。)
この処置の詳細については、さすがに文章でお伝えしきれない事が多いため、割愛させて頂きますね。
でも、ギプスをした子はもれなく骨癒合しております。
(ちなみに早期より硬性固定を行った際の骨癒合率は80~90%と言われています。)
一般的な軟性固定では骨癒合を目指せない
先ほどお話しした、「3ヵ月の硬性固定」は決して一般的ではありません。
(専門医の中では一般的なのですが・・)
通常、分離症と診断されても数週間の運動制限か、よくて軟性のコルセットを処方されるだけです。
もちろん、骨癒合を目指さないのであればそれで良いでしょう。
しかし、骨癒合を目指すのであれば、軟性のコルセット(布地に金属の主柱が2本ほど入った、マジックテープでとめるようなコルセット)では事足りません。
なぜ、一般的にこのような固定にするのか?というと、理由は3つあります。
1つは、そもそもレントゲンで判断しているため、骨折線が確認できた時には骨癒合する期間を過ぎてしまっていることも多く、分離症は癒合しにくいと考えている人が多いからです。
2つめは、ギブスなどの硬性固定を装具士に依頼して作成するには完成まで時間がかかる事、そして、管理に手間もかかるため、やりたがらないことが上げられます。(ギプスで作れば1時間もあれば出来てしまうのですがね。)
3つめは、軟性固定でも短期的に痛みは無くなるからです。残念ながら数年後の後遺症を考えている人はあまりいないのです。
まして、将来腰痛にならない可能性もあるのなら、なおさらのことでしょう!
しかし、ここで言いたいのは、愛するわが子が同じ状態であっても、そのようにするのかということです。
将来悪くなる可能性が少しでもあり、それをゼロに近づける知識と技術があるのなら、私は迷わず最善を尽くすと思います。
できるだけ後悔のない選択をするために・・・
今回ご紹介した、腰椎分離症やすべり症についての内容は、ほんの一部に過ぎません。
つい熱くなり、長くなってしまいましたが、今回お伝えした内容は大切な事を要約した記事になっていると思います。
「固定して運動中止」
伝える方も非常につらい一言ですよね。
でも、必要なことは一時の感情に流されてはいけないと思います。
その子の将来に何が必要なのか。
それはもしかしたら、骨癒合を目指さないという選択かもしれません。
全ての知識を得た上での「選択」であるのなら、それもいいと思います。
これを読んだ保護者の方が、その子の将来を見据えた正しい選択をしてくれることをに願っております・・・
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