高齢者の腰痛に要注意!「圧迫骨折」の基礎知識
よろけて、尻もちをついた後の強い腰の痛み。
「寝てても痛い」と訴える腰の痛み。
もし、あなたの周りでこのような症状を訴える高齢者がいるのであれば、これからお伝えする「圧迫骨折」を疑ってみる必要があります!
気になるその腰痛、圧迫骨折かもしれません。
尻もちをついただけで!?高齢者に多くみられる圧迫骨折
その発端は、ごく軽微な衝撃から始まります。
「うちのお婆ちゃん、ちょっとよろけて、尻もちつちゃったの」
「そしたらね、腰から背中が痛い痛いって、困ってるのよね〜・・・」
なんてこと、一度くらいは聞いたことませんか?
「えっ?こんなことで骨折?」
驚くような小さな衝撃でも、背骨を骨折することがあるんです。
それが、今日お伝えする「圧迫骨折」というおケガの話し。
聞いたことはあるけれど、意外と知らない圧迫骨折の基礎知識。
今回は、その特徴についてお伝えします!
せぼね(脊椎)の解剖学から見る圧迫骨折
まずは、圧迫骨折を説明する前に、私たちの背骨(脊椎;せきつい)について簡単に説明します。
私たちの背骨というのは、首から腰まで、およそ30個の骨によって形づくられています。
そして、背骨には椎体(ついたい)と呼ばれる、臼(うす)状の四角い部分が存在し、この骨が縦に積み重なることでその形を維持しているのです。
もちろん、この椎体は体の重さを支える場所であるため、大変強固な構造をしています。
次にこの椎体の断面を拡大してみましょう!
下図のように、椎体の外層には硬い「皮質」という層があり、内部は比較的やわらかい軽石のような「海綿質」という組織で構成されています。
この海綿質は骨梁(こつりょう)と呼ばれる、細い線維状の構造をしており、外部からの衝撃を分散させる役割があるのです。
とは言え、この椎体も一定以上の負荷が加われば壊れてしまいます。
これがいわゆる「圧迫骨折」というものです。
尻もちをつくと、高確率で椎骨がつぶれてしまう=圧迫骨折
なぜ、高齢者は「尻もち」くらいで圧迫骨折するのでしょうか?
それは、年齢と共に希薄になる骨梁と脊椎の形状にその答えがあります。
上図は「尻もち」をついた時に加わる、力の方向を表したイメージ図です。
ここで注目して欲しいのが、黄色い矢印の部分。
尻もちをついて下半身が固定されたまま、上半身が前方へと移動すると、必然的に脊椎のある一点に力が集中します。
ここが圧迫骨折の好発部位である「胸腰椎移行部」という場所です。
(名前なんてどうでもいいのですが、簡単にいうと腰と背中のつなぎ目辺りという意味です。)
なぜ、ここに力が集中してしまうのでしょうか?
それは、胸椎部が肋骨で固定されている事により、上半身の重みはすべて可動域の大きい下位の腰椎へ集中します。
さらに、地面にお尻をつくと、下からの相対する力も働きます。
つまり、尻もちをつくと肋骨で固定されていない第11、12胸椎および第1腰椎辺りに力が集中することになり、高確率でこの辺の椎体がつぶれてしまうというわけなのです。
(もちろん他の腰椎が潰れることもありますが、胸腰椎移行部が圧迫骨折の好発部位です)
よって、骨密度が低い高齢者が尻もちをついたら、真っ先にここが折れていないかどうか疑う必要があるんですね。
これとは別に、高齢者が転ぶと大腿骨の頸部骨折を起こす場合もあるんですが・・・
そのお話はまた今度。
高齢者のホルモンと圧迫骨折は大いに関係あり!
一般的に、圧迫骨折は高齢者に特有のケガであり、若い人にはほとんど起こりません。
なぜなら、体を支えている脊椎は荷重に対して非常に強い構造をしているからです。
しかし、高齢者になると自然と骨の中の密度が低くなり、少しの衝撃でも骨が潰れてしまいます。
これがいわゆる「骨粗鬆症」です。
元来、健常な骨では破骨細胞(はこつさいぼう)が骨を吸収する役割を担い、骨芽細胞(こつがさいぼう)が骨を生み出す役割を担います。
これらが共に働くことによって、骨代謝の均衡が保たれ、骨量は一定の密度を維持できているのです。
しかしながら、骨粗鬆症になると、破骨細胞による骨吸収が、骨芽細胞による骨形成を上回る状態になり、骨量の減少をきたします。
つまり、骨粗鬆症になると骨が壊れやすくなるのです。
一般に、骨量は男女とも40歳頃まで一定に維持され、40歳以降は加齢とともに減少すると言われています。
骨量は年齢とともに徐々に減少していくので、骨粗鬆症は主に高齢者にみられます。
しかしながら、女性は、更年期に骨量の急激な低下が起こるので、骨粗鬆症が早期に起こるのが一般的です。
それでは、なぜ加齢によって骨密度の低下が起こるのでしょうか?
それは・・・
加齢により、骨の代謝を維持するために大切な女性ホルモン「エストロゲン」の分泌が減る事が原因とされています。
体内で、エストロゲンの分泌が減ると、破骨細胞の働きが盛んになり、骨をつくる骨芽細胞の働きが追いつかなくなるという現象が起きます。
これが骨密度低下へと繋がる大きな要因なのです。
当然、骨密度が減って骨の中がスカスカになれば、圧迫骨折のリスクも高くなるというわけです。
さて、この女性ホルモンであるエストロゲンですが、女性ホルモンと言いながらも男性にもあります。
だから、男性も高齢になれば骨粗鬆症になり得るのです。
ただし、女性は閉経後、急激にエストロゲンの分泌が減るため、男性と比べ早期に骨粗鬆症になると言われています。
・・・。(^_^;)
なんだか、難かしくなってきましたね。
尻もちをついただけで、圧迫骨折するというのは、加齢により体内でこのような事が起こっているのです。
「寝ている状態が痛い」と訴えるときは圧迫骨折を疑いましょう!
それでは、圧迫骨折に特徴的な症状と、その診断法についてお伝えしましょう!
まず、第一に圧迫骨折している患者さんは「寝ている状態が痛い」と表現します。
腰痛症でこのような症状を訴えることは非常にまれなので、見逃さないようにしましょう!
なぜなら通常、腰痛は動きに伴って痛みを訴えるものなので、「寝ている状態が痛い」というのは圧迫骨折に特徴的な訴えなのです。
ただし、寝ている状態で腰の痛みを訴えた場合は、次の2つの可能性を考える必要があります。
①内科疾患
②圧迫骨折
なぜ、寝ている状態で痛むのか、よく分からないのですが、多くの場合このような訴え方をします。
おそらく、潰れた椎体は重力により噛み合って安定している状態が、寝ると重力が無くなるため、骨折部位が不安定になるからでは?
と考えています。
ですから、寝ているときの痛みは要注意なんです。
次に、後方から背骨を順番に握りこぶしでトントンと叩いてみましょう!
もちろん、作った握りこぶしの小指側の筋肉のふくらみを利用して叩いてくださいね。
骨の部分で叩いたのでは、そもそも痛いですからね・・・(^_^;)
この検査で、腰の上の方を痛がるようであれば圧迫骨折している可能性は高くなります。
最後に、痛めた原因がはっきりしているかを確認してください。
高齢者なので覚えていないということも考えられますが、傷める少し前に転倒などの既往があれば、可能性はさらに高くなります。
確定診断するには、レントゲン撮影を行うことが必要です。
ただし、上記の検査を行う前にレントゲン画像だけで判断してしまうと、無症候性の椎体の扁平化も拾ってしまう恐れがあります。
だからこそ、問診・触診がとっても大切なのですね!
我々はこのようにして、圧迫骨折を判断しているんです。
もし、あなたの周りで腰痛を訴えている高齢の方がいるのであれば、たかが腰痛と軽視せず、このようなポイントをチェックしてみて下さい。
圧迫骨折の治療は何よりも固定が重要
圧迫骨折の治療は、何よりも固定が必要となります。
具体的に言うと、骨盤から肋骨上部までギプスや装具を着用させます。
約4~5週間の固定が必要です。
圧迫骨折は高齢の方に多いため、安易にベットでの安静加療は、著しい筋力の低下や認知症へと進みやすいため、有効ではありません。
骨折が治っても、寝たきりでは元も子もないですからね・・・(^_^;)
よって、圧迫骨折の疑いがあれば早急に処置してもらいましょう!
圧迫骨折について、なんとなくご理解いただけたでしょうか?
これ以外にもまだまだ、重要な事はあるのですが、すべてお話しすると非常に分かり難いものになってしまうため、今回はすぐにチェックできることだけをお伝えしました。
参考になりましたでしょうか?
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