子供の肘が抜けた!? 幼児におきる「肘内障」ってなに?
保育園の先生にも知っていて欲しい「肘内障」のお話し
子供の肘が抜けた・・・
子供の肩が抜けた・・・
子供が急に手を痛がって動かさない・・・
小さな子供のいる親御さんなら一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
それは、子供によく起きる『肘内障』と呼ばれるものです。
あ〜。・・・肘内障?(^_^;)
今回は、知っているようで知らない、『肘内障』という病態について詳しく解説しましょう。
この記事を読み終わる頃、あなたは専門家に負けないくらいの知識がついているはず。
保育園の先生も知っていて欲しい、大切なお話です!
うちの子も小さい頃は、よく肩が抜けてね〜
・・・なんてよく耳にしませんか?
でもね、そのほとんどは子供によく起きる『肘内障』というものなんです。
よほどのことがない限り、子供の肩や手首は抜けたりしません。
たとえ腕を掴んで持ち上げたって、揺さぶったって、子供の肩や手首は痛まないのです。
痛めるのは決まって「肘関節」。
それでは、なぜ肘を痛めるのでしょうか?
原因を知らなければ、対処法もわからないですよね。
ということで、今回は子供によく起きる「肘内障」という病態について、できるだけ分かりやすく解説します。
肘内障には特徴的な症状がある
子供の肘が抜けたかどうか、最初に気が付くのは「子供が急に腕を痛がって泣く」という光景からではないでしょうか?
そう、この肘内障になると子供は腕を痛がって動かさなくなります。
そして、肘内障になった子供にはある共通点があるのです。
それは・・・
・小学校に上がる前の小児に頻発し、7歳以降での発生はまれであること。
・痛めた腕は痛がって動かそうとしないこと。
・動かさなければ痛がらないこと。
・無理に動かそうとすると、痛めていない方の手で振り払おうとすること。(痛い方の手で押し返したりはしない)
・肘が腫れることはないこと。
・手を強く引っ張ったり、後ろ手に手を回した状態で腕が体の下敷きになっても起きます。
・整復すると、その場で痛みが無くなり、すぐに手を使い出すこと。
・・・・などです。
ちなみに肘内障は英語で「pulled elbow」(直訳;引っ張っり肘)というように、外国でも手を引っ張るとよく発生するものと言われているのですね。
しかし、なぜ手を引っ張ると肘内障になるのか?
そもそも肘内障になった時、体の中では何が起きているのか?
疑問に思いませんか?
その答えは、これからお話しする「肘内障のメカニズム」にあります。
まずは肘関節の構造を詳しく解説します!
肘内障を説明する前に、肘関節の基本的な構造から解説しましょう。
さっそく、下図をご覧下さい。
上図は肘の解剖図です。
ここで注目して欲しいのは、肘の外側にある関節。
「腕橈関節(わんとうかんせつ)」という関節です。
少し専門用語が出てきたので、詳しく説明しますね。
この腕橈関節とは「上腕骨(じょうわんこつ)と、橈骨(とうこつ)で構成される関節」であり、上腕骨の「腕」と橈骨の「橈」をとって腕橈関節と呼ばれています。
名前なんてどうでもいいのですが、説明する上で便利なので紹介しました。(ここはさらっと聞き流してください。)
そして、この腕橈関節の機能は2つ。
「肘の曲げ伸ばし」と「手首の回旋」です。
肘の関節なのに、手首の回旋?
そう、この腕橈関節にある「バットの持ち手」のような部分は、車軸のように回旋するため、この様な形になっています。
そして、この橈骨が車軸の様に回旋することにより、手首は自由に回旋できるというわけです。
だから、肘の外側にある腕橈関節は「肘の屈伸」と「手首の回旋」の2つの機能を合わせ持つ複雑な形になっているのですね。
ちょっとイメージしづらいですか?
でも、肘内障を説明する上で大切な事なので、もう少しお付き合い下さいね。
なぜ子供の肘が「抜けた」という誤解がおきるのか?肘内障がおこるメカニズム
さて、腕橈関節についてなんとなく理解できたところで、これから「肘が抜けた」と言われる理由について説明しましょう!
そもそも、肘内障になるとなぜ肘を痛がって動かさなくなるのか?
それは、「関節包(かんせつほう)という組織が関節内に挟まってしまう」からなのですね。
だから、けっして「関節がはずれて脱臼した」わけではないのです。
関節包が挟まる?・・・(^_^;)
下図をご覧ください。
上図のように、関節には関節包(かんせつほう)と言う関節をつつむ袋が存在します。
ちなみに、この関節包は関節の内側にある滑膜という組織から、滑液(かつえき)という粘性の液体を分泌し、関節運動を滑らかなものにしているのです。
ちなみに、よく関節に水が溜まったと言っているのは、関節内にこの滑液が増えすぎた状態をいっているのです。
・・・すみません、話が逸れてしまいましたね。話を戻します。
この「関節包」という組織が関節内に挟まった状態こそが「肘内障」の正体なのです。
それでは、なぜ関節包が挟まってしまうのか?
それは、諸説あるのですが、一般的に腕橈関節にある輪状靱帯(りんじょうじんたい)という靱帯がズレることで発生すると考えられています。
(現在では、輪状靱帯は挟まっていない。なんてことも言われていますが、その真意は未確定のため、ここではあえて議論することはしません。ただ、エコーで確認すると、関節包にある滑膜という組織が関節内に挟み込まれている様子は確認できます。)
一般的に、子供の橈骨は未発達な組織であるため、柔らかいのが特徴です。
よって、手を強く引っ張られると輪状靱帯がスルッとズレてしまい、関節の間に挟み込まれてしまうのです。
では、関節に関節包が挟まるとどうなるのか?
挟まっているのだから、肘を曲げ伸ばしすると痛みます。
手首を回旋させても橈骨が動くわけですから、痛みます。
しかし、挟まった組織さえ解除されれば、痛みは全く感じなくなります。
だから整復した子供は、その場ですぐに手を使うようになるのです。
これが、肘内障の正体です。
それってほんとに肘内障?安易に肘内障と判断してはダメ!
さてさて、子供によくある肘内障ですが、時には骨折が紛れている場合もあります。
だから、子供が肘を痛がっているからといって、安易に肘内障と判断してはいけません。
そこで、骨折の可能性を見分けるための重要なポイントについてお伝えします!
①手を引っ張ったという明確な事実がない限り、骨折している可能性を否定してはいけません。
というのも、子供は親が目を離した隙に転んで手をついている事が非常に多いのです。
転んで手をついて肘内障となる事はありませんので、もし手をついて肘を痛がっているのであれば、骨折を疑いましょう。
先入観だけで決めつけてはいけません。
②肘が伸び切らない場合は骨折を疑いましょう。
肘内障であれば、肘を伸ばすと痛がるものの、ちゃんと最後まで伸ばすことは出来ます。もし、伸び切らないようであれば、骨折している可能性があります。
骨折すると関節内が腫れるため、肘関節を最後まで曲げ伸ばしが出来なくなるからです。
③肘内障で腫れることはありません
外から見て腫れがあるのなら、組織が壊れている証拠なので、骨折を疑って下さい。子供は靱帯を痛めるよりも、筋肉を痛めるよりも、骨折することが多いからです。
④手を使っているから大丈夫という判断は危険です。
骨折していても、子供は痛くないように手を使います。
大人のような先入観がないため、痛みが出ない程度に動かすということを覚えておいて下さい。
⑤脇に手を入れて抱き上げると、ひどく痛がるなら鎖骨が折れていることもあります。
肘内障では脇に手を入れて抱き上げても痛がりません。もし痛がるのであれば鎖骨を骨折している可能性があります。
子供の骨は柔らかいので、転んだ拍子に肩を打ち付けると鎖骨が折れることも珍しくないのです。
以上、骨折を見分ける5つのポイントでした。
後から気付いて手遅れにならないよう、少しでも骨折の疑いがあれば専門家に診てもらいましょうね!
肘内障の治療「整復」については別の記事で説明しますね。
肘内障にならないための対処法は「手を引っ張らず、肘より上を持つ!」
さて、肘内障にならないためにはどうしたら良いか?
それは、ズバリ手首を掴んで引っ張らないことです。
引っ張るなら『肘より上』を掴んで下さい。
これだけで、肘内障になることはありません。
肩が外れることは、よっぽどでない限り起きませんので、安心して下さい。
簡単でしょ!
たったこれだけで、肘内障は予防できます。
小さな子供がいる方は、是非実践して下さいね。
以上、子供の肘の障害「肘内障」についてお伝えしました。
ちょっと難しかったでしょうか?
でも、これを知っていれば子供と思いっきり遊ぶのも安心ですよね。
「手を引っ張らず、肘より上を持つ!」
これ、忘れなで下さいね。
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